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呼吸器新WHO分類と細胞像―腺癌の分類を中心に―

竹中 明美

大阪府立成人病センター病理・細胞診断科


 呼吸器新WHO 分類で細胞診として、大きく変わるのは、腺癌に上皮内腺癌(AIS)が明記されることであり、他に内分泌腫瘍、大細胞癌、扁平上皮癌にも分類の移行がある。
 特に腺癌では組織的に細かく分類され、「肺癌取扱い規約」との比較を試みる。
 当センターでは以前より「腺癌(粘液非産生性)予後分類」を術中に施行しており、予後良好な細胞像を呈示してきた。予後不良な腺癌との重要な鑑別点は細胞の重積、細胞集塊の大きさであり、次いで、核の大小不同、核形不整、クロマチンなど核所見である。予後良好な腺癌では、平面的配列を示し、細胞集塊は小型で、大小不同は少なく、核の明らかな異型はみられない。AISと浸潤腺癌の鑑別でも、これらの所見が重視され、不規則な重積が鑑別点となる。しかし、術前にAISと診断することは、採取部位の確認が不明であり困難であるが、浸潤性腺癌の鑑別は可能である。
 「センター予後分類」から削除している粘液産生性の腺癌ではAIS、浸潤性粘液腺癌の鑑別は細胞像のみでは困難である。ただ、異型の弱い粘液産生性の腺癌の細胞像は把握しておく必要がある。
 また、新しくリンパ管侵襲が著明で、予後不良因子と考えられている微小乳頭状腺癌が提唱された。細胞像は数個~十数個からなる重積性の乏しい微小集塊が散見され、細胞集塊辺縁が比較的平滑で球様である。しかし、微小乳頭状腺癌は組織でも診断がわかれる組織像であり、細胞像も施設格差があるように思える。
 腺癌と扁平上皮癌の鑑別は臨床上重要であるが、困難な症例も多い。細胞集塊の構築、細胞像より鑑別点をいくつか挙げるが、最終的に免疫染色を施行する傾向にある。新WHO分類でも大細胞癌は細胞像、組織像ではなく、免染の結果を重視している。当センターでも細胞免疫染色を施行する機会が多くなり、その工夫を紹介したい。


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