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脂肪組織検体における最適な脱脂処理法の検討

黒川 彩子

がん・感染症センター都立駒込病院 病理科


<はじめに>
脂肪組織検体は,従来組織プロセッサー装置にかける前に前脱脂処理を数日~1週間ほど行うが、標本作製時間・病理診断の遅れ・有機溶媒の作業環境濃度が問題となってきた.今回、脱脂処理・温度機能・撹拌機能が搭載された組織プロセッサーLeicaASP6025の導入を機に、短時間かつ良質な標本作製に有効な脱脂処理方法、およびその免疫染色への影響についても合わせて検討を行った.
<対象および方法>
1.脱脂処理法の比較:乳癌手術検体内の正常乳腺組織約8例を用いた。LeicaASP6025と従来法とで、脱脂作用のあるメタノール・キシレン(以下メタキシ)の有無や順序、撹拌、温度等の条件を変えて以下の3コースで検体処理し、脱脂効果について検討を行った。
(1)LeicaメタキシMiddleコース(以下L-Middle):エタノール(37℃)6槽→メタキシ(45℃)2槽→キシレン(45℃)3槽 / 撹拌あり、
(2)Leicaメタキシ先頭コース (以下L-先頭) :メタキシ(45℃)2槽→エタノール(37℃)6槽→キシレン(45℃)3槽 / 撹拌あり、
(3)従来法:エタノール(常温)7槽→キシレン(常温)3槽 / 撹拌なし。
2.免疫染色への影響:手術検体より作製した乳癌組織20例を用いた。HER2、Estrogen Receptor(ER)、Progesterone Receptor(PgR)、Ki-67(MIB1)における 脱脂処理法による染色性への影響を検討した。
<結果>
1.脱脂処理法の比較検討では、L-Middleは前脱脂の必要がなく、かつ最も脱脂効果が大きかった。標本作製平均日数においても、従来法と比較してL-Middleは3.58日の短縮効果があった。
2.免疫染色への影響では、ERおよびPgRにおいて同一腫瘍内の発現強度に若干の不均一性がみられたが、診断に影響を及ぼすほどの差はなかった。
<まとめ>
L-Middleは、脱脂十分で良好な標本が得られ、さらに前脱脂が不要となるため、標本作製時間の大幅短縮や液替えによる有機溶媒の拡散防止が期待でき、標本の質や標本作製の効率においても有効な方法であると考えられた。


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