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使用経験2 電界撹拌迅速免疫染色機を使用した脳腫瘍術中迅速免疫染色の有用性

谷野美智枝,竹浪 智子,木村 太一,石田 雄介,西原 広史,田中 伸哉

北海道大学大学院医学研究科 病理学講座 腫瘍病理学分野


 脳腫瘍の術中迅速診断においては,臨床所見に加えH&E染色及び細胞診を用い細胞密度,細胞形態,核異型,核分裂像,壊死,血管増生などを評価するが,診断やその悪性度に迷う症例が存在する.近年では悪性神経膠腫の治療薬としてギリアデル・ウエファーが新規に臨床適応されたが,術中診断でGrade IIIかGrade IVの診断がついたときのみ使用され,さらなる術中診断の正確性が求められる.一方,Rapid immunohistochemistry (以下R-IHC法)とは,電界撹拌におり抗原抗体反応を迅速化し,免疫染色の安定性と強度を増すことを目的にした方法であり,この方法を搭載した装置がHisto-Tek® R-IHCが販売され,その装置を用いた術中診断における利用が期待されている.我々は脳腫瘍凍結検体を対象にR-IHC法による免疫染色を施行しその有用性を検討した.Ki-67, CD20, CD3抗体を用いて免疫染色を行ったがいずれも通常希釈の抗体濃度で30分以内の免疫染色が可能であった.Ki-67 (MIB-1) indexはWHO grade IIでは2.4%, Grade IIIでは11.6%, Grade IVでは19.1%と悪性度に伴いindexの上昇を認めた.またこれらの数値は永久標本でのMIB-1 indexと強い相関を認めた.中枢神経原発悪性リンパ腫検体においては,CD20の陽性所見及び高いMIB-1 indexが確認され,永久標本での所見と一致していた.以上より脳腫瘍の術中迅速診断においてR-IHC法による免疫染色が非常に有用であることが示された.これまでに市原,八田らをはじめとして様々な方法による迅速免疫染色が開発されてきたが臨床現場ではあまり普及していない.電界撹拌技術を搭載した本方法は通常希釈倍率での免疫染色が約22分で可能であり脳腫瘍ばかりではなく今後さらなる応用が期待される.


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