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電界撹拌を利用した免疫染色装置の使用経験1

南條  博1),伊藤  智1),成田かすみ1),川村  学1)
鈴木世志子1),廣嶋 優子1),吉岡 年明1),後藤 明輝1)
大森 泰文1),南谷 佳弘2),赤上 陽一3)

1)秋田大学医学部附属病院病理部
2)秋田大学大学院医学系研究科腫瘍制御医学系呼吸器・乳腺内分泌外科学講座
3)秋田県産業技術センター


 南谷と赤上らが開発した電界非接触撹拌迅速免疫染色技術を用いた術中迅速病理診断の取り組みを紹介し,病理細胞診断への今後の活用を展望する.
 電界非接触撹拌による免疫染色法は,電界によって生じるクーロン力による吸引力と重力の組み合わせから生じる撹拌効果を利用する.通常法の抗原抗体反応はブラウン運動が支配的であるが,電界非接触撹拌による液滴運動によって内部の抗体と抗原の接触頻度が高まり,免疫染色反応は加速する.また,本法は液滴の液温上昇現象を生じさせず,タンパク質や組織の変性はみられない.
 当院における迅速免疫染色プロトコールは,サイトケラチン迅速免疫細胞化学染色プロトコールを基本とし,20分程度で免疫染色ができるように一次抗体と二次抗体の反応時間を各々5分に設定,一次抗体は通常と同じ希釈抗体を使用している.現在まで130例の術中迅速病理診断に迅速免疫染色を併用し,脳腫瘍,悪性リンパ腫,軟部腫瘍,肺腫瘍,良悪性の鑑別等の質的診断に有用との感触を得ている.迅速免疫染色結果と最終結果との乖離はほとんどみられない.また,腹腔洗浄液などの術中迅速細胞診断にも迅速免疫染色を活用し,早期中皮腫などの診断において良好な結果を得ている.がん治療の個別化,精密な外科手術に対応すべく,我々病理医・細胞検査士も迅速免疫染色を用いてタイムリーで精度の高い病理細胞診断情報を臨床医と患者様に還元したいと考えている.


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