■ プログラム

HOME > 例会抄録 > 第90回日本病理組織技術学会 > 電界撹拌の原理

電界撹拌の原理

赤上 陽一

秋田県産業労働部,産業技術センター


 精密加工技術の新たな市場は,医療機器にあると,安価なプラスチック製DNAチップの開発を平成15年度に経済産業省の支援で競争的資金に採択いただき,我々の医工連携・産学官がスタートした.この事業の成果は,μTasの基本形と超小型DNA検査装置の開発であった.しかしながら処理時間に2時間も要したため上市に至らず.迅速化技術の開発という課題が残った.
 その後,DNAの処理時間の短縮化に貢献するハイブリダイゼーション工程の迅速化をテーマに液温上昇が無く,しかも良好に撹拌する技術の確立を目指して研究を進めた.予ねてより進めていた当方オリジナルの電界砥粒制御技術を応用し,繰り返し矩形波の高電界を液滴に空気層を挟んで与えることで,液滴は,周期的な吸引挙動が生じ,液滴は上下に振動し,撹拌子が不要でも液温上昇が無く,良好な撹拌作用が生じる高速ハイブリダイゼーション技術を得た.本技術を電界非接触撹拌技術と命名し,研究成果をH15年度に設立した北東北ナノメディカルクラスター研究会にて発表したところ,秋田大学医学部教授の南谷佳弘先生は,この技術は免疫染色技術の加速化に威力を発揮し新たな医療技術が産まれると,ご提案いただきました.そこから先生との免疫染色の迅速化研究をスタートさせた.呼吸器乳腺内分泌外科の研究室で戸田洋先生は実験を行い論文投稿され,日本免疫組織学会にて論文賞をいただいた.この研究成果を秋田大学医学部病理部の南條先生に見てもらい,評価を重ね術中迅速免疫染色法のプロトコールのご検討いただいた.これで秋田の三本の矢が完成.その後,迅速免疫染色研究会を発足し,多くの先生のご支援を賜りこの春,5月12日に発売にこぎ着けました.このように,地方発医工連携・産学官連携によって,世界で初めて電界を用いた撹拌技術と医療技術と融合させ,免疫組織染色市場に投入する運びとなりました.本装置を用いることでさらに診断が高精度になり,患者様のQOL向上に繋がることを我々は祈念しております.


例会抄録一覧へ戻る