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H・E染色のメカニズム

渡辺明朗

サクラファインテックジャパン株式会社


 病理組織標本作製の一般染色として広く利用されているH・E染色について、ヘマトキシリンとエオジンの特性及び染色メカニズムについて解説する。また今回H・E染色のコンペが実施されるが、H・E染色の染色結果に影響を与える種々の因子について述べる。

1.H・E染色のメカニズム
ヘマトキシリンを酸化して生じるヘマテインが媒染剤のアルミニウムイオンと正(+)荷電の錯体を形成し、負(-)荷電の細胞核DNAりん酸基へ親和して、ヘマトキシリンが細胞核を染める。ヘマトキシリン染色液の種類により、目的としない部位へ親和した正(+)荷電の錯体を、塩酸水ないし塩酸アルコール中の同じ正(+)荷電の水素イオン(H+)と交換させて除去(分別)する。また組織成分に親和した染色液由来ないし塩酸分別由来の酸を、通常流水水洗により除去して、核をヘマトキシリン本来の青色にさせる色出し操作が行われる。
酸性色素であるエオジンの色素本体は負(-)に荷電し、正(+)に荷電する組織蛋白質に親和する。しかし組織蛋白質は一般的に等電点が低く、中性領域ではより多くが負(-)に荷電するため、そのままでは負(-)に荷電するエオジンとは斥力が働き、エオジンが組織蛋白質へは親和しにくい。そこで酢酸の酸(H+)を少量加えると、蛋白質中のリジン等のアミノ基(NH2)が正(+)にイオン化し(NH3+)、負(-)に荷電するエオジンがより親和しやすくなり、すなわち好酸性が増大する。そのためエオジン染色液へは通常酢酸が添加される。

2.H・E染色の染色結果に影響を与える因子
H・E染色は下記の様々な因子によりその染色結果が影響を受ける。
1)染色液とその使用条件
種類(処方)の違い、染色液の状態(使用中種々要因による経時的染色性の変化、染色液交換パターン、他)、使用条件(染色時間・温度)、他
2)分別・色出し条件、洗浄用水道水の水質(pHと種々イオン)、他
3)脱水条件
4)組織の種類、切片の厚さ、固定条件、脱灰、他


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