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PAS反応におけるシッフ試薬の検討
-劣化したシッフ試薬の回復について-

湯浅瑛介1),田口勝二2),村石佳重2),高橋 啓2)

東邦大学医療センター大橋病院電子顕微鏡室1),同 病理部2)


[はじめに]
PAS反応は、病理診断上、最も日常的に用いられる特殊染色法のひとつである。PAS反応は組織を過ヨウ素酸で酸化し、糖質中に生じたアルデヒド基にシッフ試薬を反応させるという原理に基づいている。しかし、シッフ試薬は劣化すると赤みを帯び、良好な染色性が失われてしまう。これは、塩基性フクシンに結合していた亜硫酸イオンが亜硫酸ガスとなって揮発してしまうことが原因と考えられる。 そこでシッフ試薬での反応に着目し、染色性が低下したシッフ試薬に亜硫酸水素ナトリウムを再添加することで染色性が回復できるか観察した。また、シッフ試薬は通常4℃にて密閉容器で保存されるが、保存温度や染色温度と染色性との関連についても検討を加えた。

[材料・方法]
外科的切除検体(肝、腎、回腸、十二指腸、大腸、胃腺癌)を10%ホルマリン水にて固定し、パラフィン包埋し、3μmに薄切した。この切片に対して染色性が低下したシッフ試薬(1年半、パラフィルムで密閉したビーカーにて室温保存)に、0.01%~2%の亜硫酸水素ナトリウムを添加し、その染色性を比較検討した。また、シッフ試薬を4℃、室温、37℃で染色した時の染色性を比較した。さらに、各温度を保ったままパラフィルムで栓をした試験管で1週間保存した後に染色を行った。染色は酸化時間10分、シッフ試薬の反応時間3分と10分で行った。反応後の亜硫酸水素ナトリウムでの分別は実験結果に影響を及ぼす可能性が示唆されたため省略した。

[結果・考察]
赤色を呈し、染色性が低下したシッフ試薬に0.1%の割合で亜硫酸水素ナトリウムを加えることで、診断を行うに十分な染色性が回復した。また、シッフ試薬は、密閉容器に入れ4℃で保存し、染色を行う前に室温に戻したうえで染色操作を行うことが最適であると考えられた。


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