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脂肪組織凍結標本作製法における界面活性剤の効用

大津赤十字病院 病理部   大森 康旨


 【はじめに】  
手術中の迅速診断標本、免疫組織化学染色等の病理組織標本の作製に凍結切片を用いることが多い。殊に乳腺での乳房温存術など手術法の進歩に伴い、最近では切除断端の提出が急増している。通常生体の生組織は均一な組織成分から成っている訳ではなく、凍結過程における組織成分、殊に脂肪組織の氷点が他に比べて大幅に低い為、以前から安定した凍結切片の作製が困難であった。今回、私たちは組織中の脂肪組織を界面活性剤で処理することによって凍結切片の作製にかなりの改善を見たので報告する。
【材料と方法】
界面活性剤 :市販液体洗剤( 界面活性剤22%含有 )、殺菌消毒剤 テゴー51( 界面活性剤10%含有 )を使用。包埋剤にはOCTコンパウンド( ティシュ-・テック )を用いた。包埋皿は大型のものを使用。 (1)包埋剤を蒸留水で50%の濃度に薄め、前述の界面活性剤を約5適(0.15ml)添加する。組織包埋に際しては十分量の包埋剤を用い、組織の浸透を良くすると同時に薄切の始端部には約3~5㎜の包埋剤の余幅をもたせ、組織を包埋する。(2)凍結は超低温冷凍装置( ヒスト・テック ピノ:サクラファインテックジャパン株式会社 )で凍結( その後、マイナス80℃の超低温フリーザー内に約5分放置 )し、薄切刃は新しいものを使用する。
【結果と考察】
本法により脂肪組織を含む凍結切片の作製にかなりの改善をみた。脂肪組織は界面活性剤により親水性となり、さらに包埋剤を50%の濃度にすることにより組織への浸透が増し、均等な凍結が可能になるのではないかと考えた。  界面活性剤は家庭用液体洗剤で対応可能であるが、テゴー51でも使用できる。テゴー51は両性界面活性剤分子中に陰イオンと陽イオンを含むで陰イオンの洗浄作用と陽イオンの殺菌作用を備えるため、脱脂と同時に感染対策にも有用である。


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