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多重癌の分子病理学的解析

長谷川秀浩(長岡中央綜合病院)


[はじめに]病理診断を行うにあたって連続性を示さない二つ以上の癌が存在する場合、それらは発生起源が同一である転移癌か同時性多重癌であるかを鑑別する必要がある。

通常は形態的類似性を基に特殊染色や免疫染色などの結果と合わせて判断するが、転移先で組織像が変化することが稀ではなく免疫染色においても必ずしも特異的な所見が得られるとは限らないことから我々は分子病理学的技術を導入し病理診断の一助としている。

[方法および結果]
[症例1] 61才、男性、胃癌、病理組織所見:[LM], Less, pType 2, T2, (SS), tub1.>pap., lympacytic infiltration(+)と [M], Gre. pType 0Ⅰ, T1, (SM), por 1.>tub 1,2., lymphocytic infiltration(+++)の組織型が異なる二つの癌についてEBV DNAの検出をPCR法でp53遺伝子 exon 5~8の変異についてPCR-SSCP法で検討した結果、[LM]:EBV DNA(-)、p53 exon 5 mutation(-)、[M]:EBV DNA(+)、p53 exon 5 mutation(+)であったことから多重癌と判断された。

[症例2] 70才、女性、左乳癌、病理組織所見:[CD]領域, papillotubulor>scirrhous.,進達度(G)と[C]領域の, solid-tubular >scirrhous.,進達度(G)と組織型が異なる二つの腫瘍部分より抽出されたp53遺伝子exon5~8の変異をPCR-SSCP法により、またX染色体上の不活化されたHuman androgen receptor gene (HUMARA)の違いについて検討をおこなった結果、双方ともにp53遺伝子exon 5の同一部位に変異を示すバンドが認められ、さらにX染色体上にあるHUMARAの解析では同一の不活化パターンを示していたことから組織型は異なるものの発生起源が同一である転移性乳癌であると判断された。


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