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DNA鑑定を応用した病理標本コンタミネーション同定法

高田雄三(防衛医科大学校法医学講座)


 多くの検体を取り扱う臨床検査において起こりうる過失は少なくはない。病理検査では標本を作製する過程において、細胞や組織の採取、包埋、薄切、染色、顕微鏡検査およびレポート提出の各段階で過失は起こりうる。過失の種類としては患者・検体の取り違え、コンタミネーション、知識・技術不足などによるものが考えられ、これら過失による被害は患者に肉体的・精神的負担を与える。

病理検査の過程で起きてしまった過失を客観的評価するためには、採取した組織や細胞が本来の宿主(患者)と同一であるか否かを明らかとしなければならない。その方法として個体識別検査が必要である。

病理検査標本はホルマリン、アルコールや樹脂などの修飾を受けているため、免疫・血清・組織学的な個体識別では、識別能力が充分に発揮できない場合が多い。例えば免疫組織化学染色により血液型を検出した場合、A、B、O、ABの4型を識別できるものの、A型であれば偶然に一致する確率は40%と高く、また、プレパラート標本など修飾状態によっては免疫組織化学染色が施せない場合もあり識別が困難となる。

そのような場合にはDNA診断が有用となる。DNA診断の特徴としては、分析する臓器、組織、細胞の種類を選ばず、適切な分析法を選択することより修飾の影響を押さえることが可能であり、また、必要な細胞数も理論上1個から可能である。つまりDNAを有する核あるいはミトコンドリアが回収できれば、修飾の有無にかかわらず、すべて分析の対象となり診断が可能であるといえる。
そしてDNA診断による識別能力としては地球上の人口を網羅できる数値にまでなる。

今回、実際に病理検査で起こったコンタミネーション例について紹介すると共に、DNA抽出法および識別法について考察する。


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