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リアルタイムPCRの基礎から応用

白神 博(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)


 リアルタイムPCRを用いた解析は、遺伝子発現解析やウイルスの検出・定量のみならず、薬物代謝酵素遺伝子の変異検出(SNPタイピング)やメチレーション解析など多くの分野で利用されている。また、特定の遺伝子群の発現変動解析から疾病状態の理解が可能となり、今後の研究成果によっては新しい疾病マーカーを用いた解析ツールとして利用されることが想定される。

遺伝子発現解析におけるリアルタイムPCRでは、指数関数的な増幅領域において目的遺伝子配列を検出できるように各サイクルで蛍光を用いて遺伝子増幅をモニタリングしているが、正確な実験を行うためにはいくつかの重要なポイントが存在する。

第一には特異性と定量性を担保するために、適切な条件でPCRプライマーを設計し、目的遺伝子を特異的かつ増幅効率を良好な状態で増幅・検出することが重要となる。さらに最終的な解析の際におけるサンプル間でのインプット量を補正する目的で内在性コントロール遺伝子を用いて解析する場合にも注意が必要となる。

ガン細胞のように正常細胞と比較して代謝スピードが速い場合や形態が異なる場合には今まで内在性コントロールとして考えられていた遺伝子が適さないケースも生じており、適切な結果を得るためには実験系構築の際に内在性コントロール遺伝子の選択・検討が必要となる。

最近ではnon-coding RNAの一種としてmicroRNAの発現異常が癌組織において多数報告されており、新たな腫瘍マーカーとしての利用や予後の判断に参考となるような知見が増加している。リアルタイムPCRを用いたmicroRNAの発現解析はこれからの臨床研究にも新たな側面から重要な役割を果たすことが予想される。

今回の発表ではリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析における基礎的な原理やメカニズムから説明し、実際の研究の現場で必要となる具体的な情報を説明すると共に最新の知見をあわせて紹介する。


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