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多彩な像を呈した精巣間質性腫瘍の免疫組織学的検討

山田正人(帝京大学医学部附属溝口病院 臨床病理部)


【はじめに】精巣には頻度は少ないがLeydig cell tumor, Sertori cell tumor, Granulosa cell tumorなどの精索/性腺間質腫瘍の発生が知られている.今回,多彩な像を呈した精巣間質性腫瘍を経験し免疫組織学的検討を加え報告する.

【症例】34歳,男性.左陰嚢内に腫瘤を触知し精巣腫瘍が疑われた.抹消白血球:395×102/μl (杆状核80%), LDH:1317 IU/Lと高値を示し精巣腫瘍の転移または白血病の合併が疑われた.腫瘍マーカーは正常値であった.精巣摘出後に骨髄穿刺が行われ慢性骨髄性白血病と診断された.

【組織所見】腫瘍細胞のほとんどが脂肪を有し,類円形?紡錘形核からなる細胞が密に増殖している部分と腺管様構造を示す部分,胞体の明るいseminoma様部分が認められた.また,ヘモジデリンの沈着部分は貪食能を示す多核細胞と比較的大型の紡錘形細胞からなる肉腫様で多彩な組織像であった.

免疫組織化学では腫瘍全体にvimentin, androgen receptorが,腺管様構造を示す部分にCD10が陽性であった.AFP, hCG, c-kit, AE1/AE3, Inhibin, Calretinin, CD99は陰性であった.肉腫様部分はCD68, S-100p, vimentin, SMAが陽性であった.以上の結果と精巣腫瘍の専門病理医によるコンサルテーションの結果poorly differentiated sertori cell tumorと診断された.

【考察】精索/性腺間質性腫瘍は分化方向がはっきりしない症例も少なくない.Leydig cell tumorが例外なく陽性を示すInhibinはセルトリ細胞腫では陽性率が文献によって異なることから陰性でも矛盾しないと考えられる.

Sertori cell tumorでandrogen receptorとCD10に関する報告はないが,CD10が非腫瘍部分のセルトリ細胞と腫瘍の腺管様構造を示す部分に陽性であったこと,正常のセルトリ細胞が有するandrogen receptorが陽性であったことは興味深い所見であった.


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