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ホルマリン固定組織およびパラフィン包埋組織からの電顕応用検索の限界

高木 孝士(エスアールエル羽村検査部病理・遺伝子検査課)


 電子顕微鏡検査では、細胞構造の保持を良くするために、検査工程で起こる数々のアーチファクトを防ぐ工夫が成されています。

特に電子顕微鏡検査を習う際にはまず、『電子顕微鏡検査は固定が命です』と説明されることが多いと思います。そのために事細かい注意点や、たくさんの禁止事項があります。確かに標本作製(固定)をおろそかに行なうと組織の状態は明らかに違います。

昨今、免疫染色・遺伝子検査等の進歩によって電子顕微鏡検査の減少が叫ばれております。また、大学病院や大手総合病院等の電子顕微鏡室も経費の削減や技術者の減少によって閉鎖、縮小される事が多くなっているようです。

保険点数の割に検査コストや手間がかかると言う事実もいなめません。このため、保険適用の組織・症例でも、腎臓以外は検査されない事が多く、腎臓検体でさえも病理、蛍光検査のみで済ませる施設も多いようです。

ただ、HE染色、特殊染色、免疫染色を駆使しても、診断の付かない症例があります。このような時に『電子顕微鏡であの構造物が観察したいのだが。沈着物の確認が出来ないだろうか?』という事を良く相談されます。

この様な際にはホルマリン固定済みの残検体やパラフィンブロックを使用して『戻し電顕』を行なう事が可能です。ただし、ホルマリン固定では細胞質や微細構造が破壊されてしまっている、パラフィン包埋組織ではその上に有機溶剤や熱変性が加わり組織の状態はさらに悪くなり確定診断が付けられない事も有ると言われております。

しかしこれらの検体でも、観察したい目的物によっては非常に有意な所見を得る事が出来ます。

今回、MRL/lprマウスの組織を利用し、ホルマリン(10%ホルマリン、中性緩衝ホルマリン)固定検体、パラフィンブロック、HE染色からの戻し電子顕微鏡検査の方法及び電顕応用検索の限界について考察したので発表させていただきます。


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