■ プログラム

HOME > 例会抄録 > 第76回病理技術研究会 > デジタル透過型電子顕微鏡(TEM)の観察法

デジタル透過型電子顕微鏡(TEM)の観察法
- 腎生検を用いて -

佐藤茂(日本医科大学中央電子顕微鏡研究施設)


(はじめに)H-7650(日立製作所)やJEM-1400(日本電子)が発売になり、透過型電子顕微鏡(TEM)もフィルムレスの時代となりました。しかし、上記デジタルTEMのカタログに掲載している生物試料の写真は俗にピンボケとかアマイと呼ばれるものである。この理由としてデジタルはアナログと異なり感度が高いことが挙げられる。そこで、デジタルTEMの為の染色法を中心に検討した。

(材料および方法)
腎疾患患者の腎生検を用い、連続超薄切片を作成して、無染、鉛の単染およびウランと鉛の二重染色の三群を比較し、以下の結果を得た。

(結果および考察)
1 検出器はサイドとボトムマウント式がある。生検材料を扱う場合、低倍率視野が重要である。そこで、低倍率重視であるサイド式が望ましい。

2 メサンギウム領域や係蹄壁基底膜の高電子密度の免疫性沈着物の観察には無染色と鉛の単染色が適している。

3 基底膜の肥厚やアルポート症候群に見られる基底膜変化は鉛の単染色と二重染色が観察に適している。

4 ミトコンドリアやゴルジ装置の単位膜構造は鉛の単染色で観察すると、アナログとほぼ同様の像が得られる。

通常、TEM観察にはウランと鉛の二重電子染色法が用いられているが、デジタルTEM観察では単位膜構造が不明瞭になるので、ウラン染色をしてはいけない。

ルーチンとして腎などの生検を扱う場合、フィルム交換や暗室作業を省けることは夢のような事である。


例会抄録一覧へ戻る