HOME > 例会抄録 > 第75回病理技術研究会 > 消化管間葉系腫瘍・GIST(Gastrointestinal mesenchymal tumo)に対するc-Kit抗体の意義とコンペ標本評価
桑尾 定仁(医療法人大和会東大和病院)
GISTは、近年消化管全般に幅広く分布する間葉系腫瘍であり、KIT(c-kit遺伝子産物)やCD34を発現し純粋な平滑筋(肉)腫や神経鞘腫とは表現型が異なります。大半のGIST症例ではc-kit遺伝子変異が認められ、従来の化学療法や放射線療法に抵抗性が高く、特に転移のみられる場合や手術施行が不可能な症例は、治療困難ながんの典型といわれています。
今回はc-kitの染色意義を再確認する目的でGISTに関する全般的な解説と、診断の決め手としての精度が要求される免疫染色法をコンペの形式をとって解説して頂きます
(運営委員会 記)
参 加 施 設
愛知県がんセンター中央病院 | 北里大学病院 |
慶応大学医学部 | 公立昭和病院 |
国立大学法人 東京大学 | 慈恵医科大学付属柏病院 |
順天堂大学医学部付属練馬病院 | 順天堂大学医学部細胞病理 |
順天堂大学順天堂浦安病院 | 東邦大学医学部付属病院 |
東北大学医学部付属病院 | 富山大学医学部 |
名古屋市立大学大学院 | 日本医科大学多摩永山病院 |
日本大学医学部付属病院 | 東大和病院 |
藤田保健衛生大学 | 防衛医科大学校病院 |
防衛医大臨床検査医学講座 | 国立病院機構水戸医療センター |
東京都老人医療センター | (有)サイパソリサーチセンター(CPR) |
順不同
コンペ資料
(工程表はここをクリックして下さい)
意見・質問等
施設1
・2次抗体:ビオチン標識マウスイムノグロブリンヤギポリクローナル抗体
ビオチン標識ウサギイムノグロブリンヤギポリクローナル抗体
・1次抗体以外はBio Genexのディテクションキットを使用
・ブロッキング後の洗浄後、Power Block(カゼイン)10分―洗浄1回
施設2
・DAKOのAutostainerを使用
・抗体などの洗浄には50mM,pH7.6トリスBuffer(Tween20を0.1%になるよう添加)を使用
施設3
・1次抗体後の洗浄は機械が自動的に判断するため時間は判らないそうです。
染色枚数が少なければ短く、多くなれば長くなるそうです
・DAKO autostainnerで普段の条件で染色しました。
抗体量は100μlです。大きい切片は染色されていない部分(弱い)があります
ルーテンでは切片は下端に寄せて拾うようにしています。
染色不備の原因は染色装置に攪拌機能がないこと、切片が大きいことが考えられる。もう少し下端よりに切片が乗せてあれば染色ムラはもう少し軽減したと考えられる。
施設4
・抗原賦活処理以下はDAKO AutostainerでChem MATE EnvisIonキット使用
施設7
・ベンタナシステムで自動染色のためブロッキング試薬、核染色(マイヤー)、緩衝液、発色システムは専用試薬となっています。
施設9
・i VIEW DAB Detection Kitでは、DAB発色の後、発色の色調を増強させるためにCopper処理を行っている。
反応条件: 37℃ 4分
施設10
・日常免疫染色はVentana社のEX systemにてsemi-autoで実施しています。
施設11、12
・以前はシンプルステインを使用していた。イムノプレス発売後は主にイムノプレスを使用。
シンプルステインで発色が弱い場合にはDAB溶液にイミダゾールを添加して反応産物の増強を行っている。
今回のc-Kit反応産物は弱いため通常はイミダゾールを使用して増強を行うが、イムノプレスとの比較のため使用していない、
施設14
・当院の標本と同様に染めた時、①②③の標本はやや染色性が良くない結果でしたので、②はクエン酸緩衝液マイクロウェーブ処理(x50)、③はイムノセーバーマイクロウェーブ処理(x1000)で染色しました。①は無処理です
施設16
・マイクロウェーブ迅速試料処理装置(東屋医科機械)を用いた1時間迅速免疫染色法(Mod Pathal2004;17:1141-1149)に基づいて試行した
施設17
・発色抗体(DAKO chem Mate ENVISION)は2倍希釈で使用
施設18
質問:Antigen Retrievalにおいては温度、容器、機材、溶液による差異が大きく抗体による格差も大きい。その様な条件のなか、ルーチンで多くの抗体を管理していく上では一様に良く染まる条件を設定し、行われます。しかし、単に良く染まってくる条件が真実であるのか、不安を感じております。例えばp53蛋白の場合、免疫結果と遺伝子解析の結果は必ずしも一致しません。この現象は蛋白と遺伝子の違いと、免疫陽性物はmutant proteinと過剰発現したwild tipe proteinであるため広く陽性を示すとの考えも有りますが、mutationが有っても染色されないケースもあります。今回のc-Kitもmast cellは強く染まりますが、GIST tumor cellはそれよりも弱く陽性を陽性を示す事が多く、蛋白発現量の差を見ているのか不明です。また、分化度による染色性の差異を出すことも出来ておりません。Antigen retrieval法は比較的簡単に陽性率を上げる方法ではありますが、
①正しい陽性像 ②正しい所見の取り方
③手法の標準化をご教授願えれば幸いです。
施設23
・必ず陽性対照をたてて染色をし、確認している
・機械で染めた場合、洗浄に使用するBufferに海面活性剤が含まれていること、浸透しながら洗浄しているわけではないことなどから染色性にムラが出てしまうのではないかと考えます。
・通常は機械で染めていますが、今回は手染めで行いましたが、①の標本がムラを生じたこと、若干機械染めに比べると染色性が弱いと思い1次抗体から機械染め(洗浄法やBuffer)に準じて2度染めを行いました。