HOME > 例会抄録 > 第75回病理技術研究会 > 剥離防止用コートスライドの接着原理について
新道 弘規(松浪硝子工業株式会社技術開発部)
１，技術の背景
病理組織染色、免疫染色おいて、組織切片をスライドガラスに接着させ各種の処理や試薬に浸漬するが、操作の過程において組織切片が剥離、脱落することが問題となっていた。これらの問題点を改善する為に、スライドガラス表面に正電荷を付与したコートスライドガラスが利用されている。従来、コートスライドガラスとしてポリ-L-リジンコート、ＡＰＳ（アミノシラン）コートが一般に市販されている。しかしながら、両コートスライドガラスは、ガラス表面が疎水性になる・接着性が弱いことや、スライドガラス上での組織切片の伸展と接着が難しく、また技術取得に時間がかかった。そこで、従来のコートスライドガラスよりも表面アミノ基密度を高密度化し、接着性が高く、コート表面が親水性のMASコートを開発した。さらに新規開発ガラスを使用して、ＭＡＳコートを改良したＭＡＳ－ＧＰコートの販売も開始した。
２，技術の内容
MASコート剤は、ガラス表面のOH基と共有結合によってコート層を形成し、ガラス表面上に高密度のアミノ基を付与させることができる。アミノ基は化学的に安定で、正電荷を持つことからMASコートスライドガラスは従来のコートスライドガラスよりも優れた組織切片やDNA固定性を有する。またMASコート剤により形成されるコート表面は親水性も有することから、従来のコートガラスよりもガラス表面と組織片の間の水抜け性が良く、乾燥しやすい特徴を持つ。またスライドガラス全体に均一な試薬処理が可能で、剥離防止コートスライドガラスには最適な特性を有する。
３. 適応分野
ガラス表面に高密度かつ均一にアミノ基を付与する技術を基に、病理組織染色、免疫染色エリアのみならず現在ではその発展手法として、ＤＮＡマイクロアレイ・タンパクチップ・細胞培養・免疫診断関連等の新規商品展開しており、その一部もご紹介します。
