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免疫組織化学染色によるHER2タンパク検査
― SV2-61γを含めて ―

長嶋 健二(ニチレイバイオサイエンス)


今日のがん治療は、化学療法剤や放射線による治療に加えて分子標的治療薬による治療が行われるようになってきている。これは患者の体質や病状に適した治療を行うことが重要視されるようになり、いわゆるオーダーメイド医療(テーラーメイド医療)が治療の現場に台頭してきているからである。

また、科学的根拠を把握した上で個々の患者と治療方針を決めていくこと(EBM:Evidence Based Medicine)が必要になってきている。

乳癌治療においては特にこのオーダーメイド医療、EBMが進んでいるものと思われる。

世界で最初となるヒト化モノクローナル抗体治療薬であるハーセプチンは、転移性乳癌の治療薬として本邦でも厚生労働省の認可を取得して使用されている。更に最近では、欧米を中心にした大規模臨床治験の結果より、原発乳癌の術前、術後補助療法でも治療効果が認められる臨床治験データが多数、報告されている。

近い将来、ハーセプチンは原発乳癌に対しても有効な治療薬として使用される可能性が出てきている。

トラスツズマブ病理部会やアメリカ臨床腫瘍学会では、原発乳癌からHER2の検査を行うことを推奨してきた。

更に、乳癌の治療方針を決める世界的な会議であるSt. Gallen Consensus Meetingでは、2005年1月に原発乳癌の治療方針決定の指標となるリスクカテゴリー分類にHER2の発現情報を取り入れた。原発乳癌の治療からHER2の発現情報を確認する必要性を述べている。

HER2蛋白の過剰発現を確認する検査方法として、免疫組織化学染色は一般に普及してきた。体外診断用医薬品として厚生労働省の認可を取得して市販されている抗体(試薬)は複数ある状況であるが、第一抗体の種類やクローンの違いにより特異性に差が生じていることが報告されている。

新しいモノクローナル抗体が開発されてきており、その1つであるクローンSV2-61γはFISHとの相関性が高いということが報告されている。

また、認識する抗原エピトープ部位の違いにより、抗原エピトープの賦活化処理に従来の熱処理ではなく、蛋白分解酵素処理を行うという特徴もある。

本講演では、乳癌治療におけるHER2検査の必要性、重要性が拡大している状況背景について紹介する。また、抗体の特異性に関する報告を紹介すると共に、モノクローナル抗体SV2-61γの特徴について述べる。


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