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ホルマンボードを加工した吊り下げ型臓器固定板

深澤 徳行(なめがた地域総合病院臨床検査部)


【はじめに】病理検査では、手術材料などの臓器組織を伸展固定する場合、軽く弾力のあるコルク板を主に使用する。しかし、ホルマリンを吸収して強い刺激臭がなかなか取れないため、臓器貼付けはこの刺激に耐えながら作業しなければならない。

コルクに替わるものとして、松浪ホルマンボード(以下HB)が発売されているが、使い勝手が悪くあまり普及していない。

我々はHBを加工した臓器固定板を作成し、良好な使用状況を得たので報告する。

【目 的】HBの特徴は、
長所として
①特殊ゴム素材で固定液に耐性がある
②片手でピンが刺せる適度な弾性をもつ
③汚れにくく洗いやすい
④固定液を吸収しないので直ぐ再使用可能
⑤比重が重く(約1.42)固定液に臓器ごと沈む

欠点は
⑥大きいものは固定液中で自立できず、槽に立てかけるとたわんでしまう
⑦固定槽の底に沈めると取り出し難い

などであり、特に④は臓器貼付けをする技師や医師にとって朗報である。
欠点⑥⑦を克服する改良を試みた。

【方 法】通常固定コルク板は固定液面に逆さに浮かべるか、片側に錘をつけて縦に沈めて使用するが、ホルマンボードは重い比重のわりに柔らかく変形し易いので、固定液槽中に吊り下げる方式とした。

<材料>LLサイズのHB(400×300×8mm)、径9.5×350mmのステンレスパイプ、ナイロン製結束バンド 

<作製>HBの短辺側から10mm内側に丸彫刻刀で直径5mmの穴を数箇所あけ、其々結束バンドを通してステンレスパイプをHB短辺に固定する。

<固定槽>ステンレスパイプを吊り下げられる2重構造の固定槽を委託作製した。

【結 果】吊り下げることで臓器は真直ぐ固定される。HBは薄く省スペースのため何症例も並べて固定可能である。また、簡単な洗浄で使用直後でもホルマリン臭を全く感じないで作業でき、洗浄後放置した場合でも20分程度で乾く。

更に固定液面をパイプより下に調整することで、固定液に全く触れずに浸漬や取り出しができる。

【まとめ】HB臓器固定板を吊り下げ型に加工することで、ホルマリン臭がしない特徴を生かしたまま浸漬や取り出しに便利な機能を持たせることに成功した。

加工HBの形や大きさは、固定槽内に吊り下げ部分を作製すれば施設ごとの形式に応用可能と思われる。


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