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(胆汁・膵液)   ―胆汁の保存法―

古旗 淳
(順天堂大学大学院医学研究科 細胞病理イメージング研究部門


【はじめに】胆汁細胞診が難しい原因に強い変性がある。この変性を防ぐためには、採取後の迅速な固定処理に頼っているのが現状であるが、多くは臨床側の要因で守られていない。そのうえ、これまで胆汁における変性防止処理の検討は十分に行われていない。

演者は、学外の施設から送られてきた胆汁を扱うる機会が多いが、その検体処理に苦慮してきた。今回は、これまで工夫してきた一部を紹介したい。

【方法】術中胆嚢内およびPTCD胆汁について、採取直後、胆汁1容に以下の保存液1容を加え十分混和した。

①液:PBS、②液:50%エタノール・PBS、③液:A社液状検体用保存液、 ④液:B液状検体用保存液。

それぞれ室温にて、直後、および3時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日放置後、遠心し沈渣を塗抹後、95%エタノール湿固定または風乾後、Papanicolaou染色し、形態学的変化を観察した。

何も加えないConventional(Conv)法を対照とした。

【結果】湿固定の直後では、①液~④液すべてConv法と同様であったが、④液では核の濃染傾向を示した。

Conv法では3時間後に核・細胞質の濃染・縮小傾向の増強が始まり、3日後には強い濃染・縮小のため、判定困難となった。

①液ではConv法と同様の結果であった。
②液では3日後まで変化はなかったが、4日後に濃染・縮小傾向の増強、5日後には核の染色性が失われ判定困難となった。
③液では核の濃染傾向があったが、3日後まで判定可能で、4日後に核の染色性が失われ判定困難となった。
④液では2日後まで変化はなく、3日後に核の濃染性が増し、4日後に判定困難となった。風乾固定では、核・細胞質の染色性は湿固定と同様の経過を示したが、核小体が目立った。

【まとめ】Conv法=①液<③液<④液<②液の順に保存性は良好となり、安価な50%エタノール法が最も有用と思われた。


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