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(喀痰)   喀痰細胞診における私の工夫
―検体処理と標本作製―

斉藤 豊(CT)1)、松栄 明子(CT)1)、大塚 重則(CT)1)
田中 昇(MD,DDS)1)、上野喜三郎(CT)2)

BML 病理・細胞診センター(PCL)1)
東京セントラル パソロジー ラボラトリー2)


【はじめに】肺癌は近年増加傾向にあり、喀痰細胞診は必要不可欠な検査手段である。特に、肺門部扁平上皮癌においては喀痰細胞診に頼らざるを得ないのが現状であり、癌細胞を効率よく集める方法として種々の蓄痰法が開発されてきている。

蓄痰法は、直接塗抹法と比較し経時的変性が加わり組織型の推定に苦慮することがしばしばある。さらに直接塗抹法と比較し標本作製過程においても細胞の剥離状態及び染色性に違いが生じることがあり、それらについて検討を行った。

【検討内容】一般的に用いられている6種類の蓄痰溶液に扁平上皮癌、腺癌、腺癌(肺胞上皮型)、小細胞癌の新鮮痰を入れ下記の検討を行った。

1)『各蓄痰法による癌細胞の経時的変化』
2)『各蓄痰法による細胞の剥離状態』
3)『直接塗抹法(生痰)による癌細胞の経時的変化』
4)『直接塗抹法、蓄痰法における染色性の相違点』

【結果】
1)各蓄痰法による癌細胞診の経時的変化 扁平上皮癌では、30日後でも比較的判定が可能な状態であったが、他の組織型では1週から20日を過ぎた段階で組織型推計が困難な状態であった。

2)各蓄痰法による細胞の剥離状態 保存液によってはほとんどの細胞が剥離してしまった。剥離防止を防ぐ方法として、蓄痰法においては塗抹後、95%エタノール再固定のみでなくスプレー固定およびPoly-L-Lysine Coatingガラスの併用が望まれる。

3)直接法(生痰)による癌細胞診の経時的変化 扁平上皮癌は20日後でも判定可能な細胞が多く認められたが、腺癌および小細胞癌では7日目まではほぼ癌細胞として判別可能であったが、20日後ではほとんどの細胞が判定不能であった。

4)直接塗抹法、蓄痰法における染色性の相違点今回検討した6種類の蓄痰法すべてにおいてヘマトキシリンに過染する傾向が見られ、組織球との鑑別が困難で染色に際してはヘマトキシリンの濃度と染色時間および分別の塩酸濃度、分別時間の調整をする必要があると思われる。

【まとめ】
喀痰細胞診の検体処理と標本作製において日常、注意あるいは工夫すべき4項目について検討した。

喀痰細胞診においては、標本作製の手技により細胞判定に多大な影響を及ぼすことがしばしばある。特に、喀痰のいわゆる直接塗抹法(生痰)と蓄痰法では検体処理方法の違いにより細胞に与えるダメージもまちまちである。

今回検討した経時的変化でも生痰、蓄痰法ともに一週間を経過するころには癌のtypeによってかなり変性が加わる。診断精度を保つには可能な限り採痰後速やかに塗抹、固定することが望まれる。

今回使用した各蓄痰法の保存性に関しても癌細胞の組織型の違いによって変性の度合いに差が見られることから、鏡検時に蓄痰法の種類を留意した上で細胞を判定することが重要と思われる。


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