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家庭用電子レンジを用いた迅速免疫染色法

八田秀樹.他(国立大学法人富山医科薬科大学医学部病理学第一講座)


 現在、免疫染色は診断病理における最も簡便で信頼性のあるツールとして確立・頻用 されており、我々の施設でも全標本の13~15%で免疫染色がオーダーされている。

1症例あたり平均約10種類の染色が施行されていることから、年間5000~6000枚の免疫染色 が施行されている計算になり、限られた人員で如何に効率良く、再現性の高い免疫染色 標本を作製するかが大きな問題となる。

Dextran polymer法を用いた一般的な免疫染色法では、一次及び二次抗体の反応時間が室温で1時間に設定されている為、脱パラフィ ンから染色完了までに少なくとも3時間要することになる。勤務時間等の関係で、一次抗体の4℃でのオーバーナイトインキュベーションを採用している施設も少なくないが 2日がかりの作業は非効率的であり、診断結果の遅れ等の弊害を生じる。

我々はこれらの問題を解決する為、間欠照射方式マイクロウェーブ(MW)を用いた迅速免疫染色法を開発し、Modern Pathologyを通じて世界に発信した。本法は全工程が約1 時間で終了する為、他の病理業務の合間に免疫染色を完了することができ、診断に要する時間も大幅に短縮される画期的な方法として各方面から評価された。

しかしながら本法で使用している間欠照射式MWが海外で入手できないことから、一般の“家庭用電子レンジ”の使用についての問い合わせがいくつか寄せられた。

家庭用電子レンジは出力の調節が不可能であり、通常の方法では瞬時に蛋白質である抗体が変性してしまい免疫染色は不可とされている。

そこで今回我々は、
① 熱量を如何に逃がして抗体の温度上昇を抑えるか
② どのような照射条件が免疫染色に最も効果的か
の2点について検討し、家庭用電子レンジを用いた迅速免疫染色法の実用化を目指す。

本法の開発は、“迅速免疫染色法”の更なる普及につながり、患者様へのより質の高い医療の提供につながると期待される。


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