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パラフィン切片からの結核菌DNAの検索技術

大友幸二
結核研究所抗酸菌レファレンスセンター細菌検査科


 病理組織学的な抗酸菌の検出は,通常パラフィン標本によるチール・ネールゼン染色,蛍光染色,抗BCG免疫染色などにより証明される.これらの方法は抗酸菌の確認は可能であるが,抗酸菌を同定分類をすることができない.
PCR (polymerase chain reaction)法による抗酸菌DNAの検出では,ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)と非結核性抗酸菌 (non-tuberculous mycobacteria)の鑑別が可能である.日本における非結核性抗酸菌感染の70%はMAC (M.avium-intracellulare complex)で,この抗酸菌との鑑別を優先して同定できれば,ヒトに感染性の抗酸菌の殆どが鑑別される.これらの鑑別同定は臨床上治療薬剤の選択に大きな意義をもたらす.
実際われわれが行っている操作方法と注意点を示す.① 無菌的な薄切手順.② 脱パラフィン.③ 重要なポイントである組織の溶解の方法と確認.④ DNAの抽出方法.⑤ 電気泳動によるDNAの長さの確認とOD測定によるDNA量の確認.⑥ PCRの処方と条件.⑦ 電気泳動によるバンドの確認.
PCR法で特に注意が必要なのはコンタミネーションと核酸を確実に抽出できることである.コンタミネーションは操作全般に注意が必要で,DNAの抽出は他の菌には無い抗酸菌の厚い細胞壁を壊し,DNAを外に出す操作③が最も重要なポイントになる.
この方法の延長線上には遺伝子rpoBを増幅し(360bp),MspIHaeIIIの酵素で消化することにより抗酸菌のPRFLP (PCR-restriction fragment length polymorphism)による鑑別が可能で多種類の抗酸菌が分類できる.


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