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迅速マイクロウェーブティシュープロセッサーRHSによる
ホルマリン固定パラフィン包埋標本の組織形態および染色性の特徴

百瀬正信1),小林幸弘1),下条康代1)
下枝祥枝1),行田弥生1),羽山正義2)
1)信州大学医学部附属病院臨床検査部病理検査室
2)信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻


 現在,私たちの病理組織検査では骨髄移植後のGVHDや肝臓移植後の臓器拒絶反応の診断が急がれる場合,迅速凍結標本とパラフィン切片作製を平行して行っている.迅速凍結標本では標本の質的な限界により判定が困難となる場合が生じるためで,迅速診断用の組織とは別にホルマリン固定用の組織も提出してもらい確認診断を行ってきた.そのような場合,検体採取から確定診断まで十数時間かかっていた.一方,近年,病理診断の迅速化が望まれるなかで,マイクロウェーブ照射と減圧機構により,2時間から3時間でホルマリン固定-パラフィン包埋のできる装置として迅速固定パラフィン包埋装置Rapid Microwave Histoprocessor (RHS)マイルストン社製(以下RHSと略す)や,ティシュー・テック・エクスプレス(サクラファインテックジャパン)が相次いで開発されてきた.そこで,今回,私たちの検査室で導入したRHS装置を用いて,標本の質的な面(組織構築,染色性,抗原の保存などの点)から,従来のホルマリン固定パラフィン包埋標本との違いを比較検討した.
<材料および方法>材料は,当病理検査室に提出された未固定の手術材料(肝臓,脾臓,大腸,胃,肺,扁桃などを)を用いた.固定-包埋処理法は,①RHSで固定から包埋まで行ったもの②固定のみRHSで行い,後続の処理をETP自動包埋装置で処理したもの,③従来法(室温固定,ETP自動包埋装置で処理)の3通りを検討した.染色方法は,H.E染色,A B-PAS,AZAN,E.V.G,鍍銀および酵素抗体法を検討した.
<結果>RHS処理を行った標本は,従来法と比べてやや好酸性が強くなる傾向にあった.また,組織構築の保存性は,従来法とほぼ同程度の結果が得られた.ただし,組織によっては固定ムラが生じることがあった.この現象は未固定組織を薄く切り出すことにより解消できる傾向にあった.酵素抗体法については,RHS処理を行った標本は,従来の固定・包埋処理法と,ほぼ同様な染色性を示したが,幾つかの抗体については,若干の相違点が認められた.


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