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ホルマリン固定-パラフィン包埋組織におけるHER-2-FISH法の検討

下條康代1),松田和之1),今泉雅之2),日高恵以子1),行田弥生1)
下枝祥枝1),百瀬正信1),小林幸弘1),上原 剛1),羽山正義3)
1)信州大学医学部附属病院臨床検査部病理検査室
2)松本協立病院臨床検査科
3)信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻


 HER-2 FISHキット(Vysis社,藤沢薬品工業(株)扱いパスビジョン)では,組織材料の固定は10%中性緩衝ホルマリン液で24~48時間としている.しかし,日常の病理組織検査では,組織構造の保存性と組織化学的検索に優れている20%中性緩衝ホルマリン液が使用される傾向にあり,常に10%ホルマリン濃度の材料が得られるとは限らない.また,通常の乳癌症例では腫瘍部位が微小な場合や,正常組織との識別が困難な場合FISH用材料採取は制限されることもあり,HER-2 IHC法とFISH法が同一組織で行わざるを得ない場合も少なくない.そこで今回は,10%中性緩衝ホルマリン固定材料が得られなかった場合のことを想定して,20%中性緩衝ホルマリン固定材料におけるFISH法の条件の違いを,固定時間と酵素処理条件の2点に絞って検討した.
結果は,10%中性緩衝ホルマリン固定材料の24~72時間の範囲では,再現性良くシグナルの観察ができたが,脂肪組織の多い乳腺組織では固定不足になりやすいためか,特にHER-2 IHC法ではヒビ割れや非特異反応などが目立った.
20%中性緩衝ホルマリン固定材料では,固定時間の違いにより酵素処理条件に大きく左右される結果を示したが,10%ホルマリン固定材料で指定されている酵素処理条件を延長するか,新たな酵素液を調整することにより,十分なシグナルを得ることが可能であった.


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