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パラフィン切片からのゲノムDNAを用いたクロナリティ解析

滝野 寿
名古屋市立大学大学院医学研究科臨床病態病理学


 近年,病理組織検査においてもホルマリン固定,パラフィン包埋された材料からDNAを抽出して分子生物学的な検索が行われるようになった.パラフィン包埋材料から抽出したDNAはもともと断片化しているために,その検索には限界があるが,250bp以下のフラグメントであれば,PCR法による増幅,SSCP法やシークエンシングによる遺伝子変異の同定,RFLP法やマイクロサテライト法によるアレル欠失の同定およびレプリケーションエラーの検索などが可能である.
悪性腫瘍の進展における中間段階には,連続的なクローンの増殖という規則的な変化が認められている.形態学的にはそれらの変化を免疫組織化学的手法によってクロナリティを証明してきたが,最近では腫瘍細胞(単クローン)を多く含む検体を用いて,特異プライマーでPCRを行い,クローナルバンドを確認する方法でクロナリティの証明する方法が用いられるようになってきた.悪性リンパ腫の多くは,免疫グロブリン遺伝子(Ig),T細胞受容体(TCR)遺伝子の再構成を経ており,その結果,これら遺伝子の可変領域は腫瘍クローン特異的な配列を持っている.このIg,TCR可変領域(VDJ)を増幅するPCRを行うと,クローナルバンドとして確認することができる. また,固形腫瘍においてもp53遺伝子変異,PTEN遺伝子変異,K-ras変異など癌抑制遺伝子や癌遺伝子の変異を同定し,同一の腫瘍であるか否か,病変が反応性・過形成病変であるか腫瘍性であるかの鑑別,単クローン性か多クローン性かの判定,および腫瘍クローンの発育進展様式,異型度,組織分化能に関する情報,多発癌(同時性,異時性)の由来,転移性か原発性の鑑別等にもクロナリティ解析は有用である.
これらの方法を用いれば組織学的に判定困難な微小な病変や,腫瘍細胞の再発・残存の有無を分子生物学的に確認することが可能である.


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