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家庭用洗剤をもちいた加熱処理による脱パラフィンおよび抗原賦活化の検討

公立昭和病院

濱川真治 森島理恵 近藤洋一 坂牧久仁子 田辺美絵
柏崎好美 森 一麿 三浦千砂子 清水誠一郎


 1869年にKlebsが組織を囲む用途としてパラフィンを利用して以来、パラフィンは現在でも光学顕微鏡用標本作成には欠かすことのできない包埋剤である。パラフィン切片をスライドガラスに貼布し、各種染色過程に移行する際にはパラフィンはもはや不要物でしかなく、一般にキシレンなどの有機溶剤を用いて除去し、下降アルコール系列によって親水化の施れた標本を基本として各種染色が開発されてきた。脱パラフィンにキシレンを使用する場合、局所廃棄装置などの作業環境整備や、一定量以上使用する事業所に対してはPRTRが必要となり、さらには廃棄に関する問題もある。近年、代替キシレンと称した毒性の低い溶剤が開発・市販化されてきてはいるものの、キシレンに比べ2~3倍の購入費が掛かり、含有している物質名が不明確で廃棄に関しても問題となる点がある。キシレン、代替キシレン以外の物質を脱パラフィンに応用した報告は少ない。今回われわれは、家庭用液体洗剤水溶液を用いた加熱処理による脱パラフィンを試みたところ、キシレンに比べ脱パラフィン作用は十分とは言い難いものの、HE染色はじめ各種特殊染色に関しては一部の染色を除きほぼ同等の染色結果がえられた。また、洗剤の種類および加熱処理の条件によっては、脱パラフィンと同時に免疫染色における抗原賦活化も可能であることが判明したため、その有用性と処理の注意点、今後の課題について報告する。


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