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好熱菌による発酵分解法を用いたホルマリン固定臓器の廃棄処理

済生会滋賀県病院 病理科

小林忠男 植田正己 西野俊博 村松美津江 盛谷鈴子


【はじめに】外科的手術などを通して摘出された組織や解剖後、検査された臓器の廃棄に関しては、一定のマニュアルが存在する訳ではない。各施設それぞれに応じた処理(斎場で焼却、感染性廃棄物として業者委託)がなされているのが実情である。今回われわれは微生物の力で発酵分解する(バイオ方式)方法で好熱菌を利用したホルマリン固定臓器廃棄装置の開発を企てた。
【材料及び方法】使用した機器は組織分解減容装置で三洋電気バイオメディカ(大阪)と共同で開発した。本装置は発酵槽で組織を粉砕し脱ホルマリン工程を終えた後、好熱菌(50~70℃で最適生育温度)で処理し最終的には乾燥排出された処理物の減容化を行う。固定組織は水15~20リットルおよび木チップ5~7リットルと共に投入し約14時間処理した後、好熱菌による発酵を8時間行った。実験ははA~E群にについて調べ、投入前水洗の有無、硬化の強い組織や脂肪組織また、真空パック組織などについても調べた。発酵菌はBacillus Midosujiを用い(乾燥粉末)1回50gで実験した。減量率の計算は最終処理物の重量を測定し減量率計算をした(総投入量-処理物重量÷臓器投入量)なお、分解度の評価は一般家庭用生ゴミ処理物と比較した。
【結果】いずれの条件でもホルマリン固定臓器の分解度は良好で減容率約60%で木チップを除く減容率は79%であった。また、真空パック組織についても同様な分解度を示した。なお、ホルマリン残留濃度は0.26%と低地を示した。しかし真空パック標本のナイロンは未処理のまま残った。また、処理物からの通常の病原性微生物の検索を試みたがいずれからも菌の発育はなかった。
【まとめ】病理業務の日常にあってホルマリン固定臓器の処理に苦慮することは多くいずれの施設においても同じような問題を抱えている。今回、われわれが企てた実験はバイオ方式を応用し、また発酵菌として好熱菌を利用することで臓器廃棄物の減量化を可能にした。本実験で使用したBacillus 菌は増殖スピードも通常微生物の4~5倍と速く、装置内で最適な生育条件を維持させることで成功した。ホルマリン水洗処理の有無にかかわらず投入した固定組織の分解度は良好で、減量率も平均60%であった。本装置は病理検査にかかわる臓器廃棄物の減量化を考慮しつつ可能にした。今後、本法は有益な臓器の廃棄処理の一つになり得ると思われる。


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