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HER2過剰発現 -基礎から臨床へ-

梅村しのぶ、長村義之

東海大学医学部総合診療学系病理診断学部門


HER2 (Human epidermal growth factor receptor-2) 遺伝子が発見されたのは、わずか約20年前のことである。遺伝子産物は185kDaの受容体型チロシンキナーゼであり、EGFR (HER1), HER3, HER4とファミリーを形成している。HER1, 3, 4と2量体を形成して、細胞外からの刺激を細胞内に伝え細胞増殖に関与している。
HER2過剰発現を伴う乳癌の臨床病理学的特徴としてリンパ節転移が多く、ER陰性症例が多い。HER2過剰発現の無い乳癌に比較して、とくにリンパ節転移のある症例での予後は不良である。また、アンソラサイクリン系抗癌剤に対する感受性が高く、ホルモン療法に抵抗性である。このように、HER2過剰発現は、臨床的に予後因子として、また治療効果予測因子として有用である。
癌治療の新戦略として、細胞増殖に関与する膜受容体に着目し、そのモノクローナル抗体が治療薬として開発された (Trastuzumab)。Trastuzumabは、基礎的実験、臨床治験を経て、臨床応用されるに至り、昨年6月国内においても転移再発性乳癌について保険収載された。
治療をより効果的に行うためには、HER2過剰発現があるか否かを、乳癌材料を用いて検索する必要がある。代表的な検索方法である免疫組織化学的染色とFISH法についてそれぞれの利点と問題点について解説する。
乳癌診療における病理の役割は、腫瘍の広がり、切除断端、リンパ節転移の検索が、従来も、また今後も重要な部分を占める。今回のHER2検索は、より直接的な治療方針決定のための情報となる。よって、その検索方法については、確実性、再現性に優れたものであることが要求される。
本講演では、HercepTest施行の意義をよりよく理解するために、HER2過剰発現乳癌に関する背景について概説する。


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