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7.コンペ1 「EVG染色で何を見るか?」

清水 英男

湘南鎌倉総合病院・病理診断部


 エラスチカ・ファン・ギーソン(EVG)染色は、弾性線維を黒褐色、筋線維を黄色、膠原線維を赤色に染め分けることができるため、まず全身の臓器に存在する血管系に威力を発揮する。血管系の種類の同定だけではなく、それらの病変の認識に有用である。また、線維化を起こした病変などについて、線維化内の血管の種類を見分けることにより、その形態形成過程を類推するのに役立つことがある。それゆえ、日常の病理組織診断において、EVG染色はヘマトキシリン・エオジン(HE)染色に次いで汎用されている。まず、配布標本である肺(腺癌)について、その中にある血管の種類と存在部位、固有の構造である肺胞と臓側胸膜の弾性線維の組織像などを示す。次にそれらに基づいて、肺癌の手術検体に関して、どのようなことをEVG染色で観察しレポートするかを解説する。血管については、血管固有の病変である血管炎(動脈炎)とその瘢痕、動脈硬化(粥状硬化、メンケベルグ型硬化)とその存在部位などについて解説する。胃や大腸などの癌の手術検体については、EVG染色で主としてどのようなことを見るのかを示す。肝については、線維化をきたす慢性肝炎と肝硬変に関して、その立体構造からみた両者の相違の有無、他の膠原線維染色と比較したEVG染色の有用性になどについて解説する。皮膚については、とくに加齢(日光曝露)に伴った皮膚の変化に関して解説を行う。組織標本においては、HE染色は主に細胞の種類の同定や顔つき(異型性)を判断するのに有用であるのに比べて、EVG染色は組織構築とその変化、癌についていえばその行動(態度)などをみるのに有用な染色なのである。


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