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3.病理検査室における有機溶剤廃液の最利用システム導入の検討

舘林 妙子    篠田  宏

北里大学東病院病院病理部


<はじめに>病理検査における有機溶剤(アルコール・キシレン)の廃液の削減及び購入費の節減を目的として、PPA-4010FS型小型蒸留装置(東科精機株式会社製)による、再利用システムの日常業務内導入を検討したので報告する
(方法)1.廃液の回収、蒸留、成分分析種類別に回収した各廃液を、エタノール、キシロール各々の蒸留プログラムで蒸留し再生液とし、各廃液、再生液をガスクロマトグラフィーにて成分分析を行った。日常業務内での各々の過程における有機溶剤についても成分分析を行った。

<結果>1.各廃液と蒸留した再生液の純度(ガスクロマトグラフィー)

 

廃液   (wt%)

蒸留液   (wt%)

エタノール

キシロール

エタノール

キシロール

主エタノール+水

82.5

0.1

17.3

91.5

0

8.5

主エタノール+キシロール+パラフィン

97.6

2.3

0.1

97.6

2.2

0.3

主キシロール+エタノール

12.5

85

0.3

0.2

99.7

0

主キシロール+パラフィン

0

99.8

0

0

99.8

0

エタノール

 

 

 

99.9

0

0.1

キシロール

 

 

 

0

99.8

0


上記の結果より、①エタノールは、水との共沸現象により純度95%以上にすることは困難であり、また、エタノール中に入った少量のキシロールを除くことはできないため、キシロール混入エタノールは再生エタノールの回収廃液としては不適である。②キシロールは純度が高く、新品と同等の純度で再生された。蒸留時間は廃液18lあたりキシロールで5時間、エタノールで9時間程度かかる。
2.実際での運用方法
①再生エタノールは、最高純度95%、キシロール混入エタノールは回収廃液としては不適であり、廃液回収、使用方法について工夫が必要である。
②再生キシロールは高純度で廃液回収、再生もエタノールに比較し簡便であった。再生液を業務内で2ヶ月間運用した結果、使用したキシロールに対して、回収できた廃液量は約85~90%であった。また、廃液から回収できる再生液は約90%であった。したがって、新規購入する量は今までの20%でありキシロール廃液として処理する量も、従来の5~10%になり、運用方法によっては、0にすることも可能である。また、再生キシロール使用後から現在まで、標本作製過程および標本に影響は認められなかった。


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