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1.Hercp Test導入時の問題点-その手技と判定方法について-

福屋美奈子1)、畠榮1)、田村恵1)、成富真理1)、岩知道伸久1)、小林 博久1)
定平吉都2)、三上芳喜2)、真鍋俊明2)、橋詰薫3)、畑中豊3)

川崎医科大学附属病院病院病理部1)、同 病理学教室2)、ダコ・ジャパン株式会社3)


【はじめに】Hercep Testは浸潤性の乳癌において、Herceptinによる治療の適用を評価するために用いられるスクリーニング検査である。我が国では、2001年6月に保険適用が承認され、すでに導入されている。今回我々は、この検査の導入にあたり、無作為に抽出した乳癌症例83例を用いて染色を行い手技や判定における問題点について検討した。
【材料および方法】材料は1999年~2000年に当院にて摘出された乳癌症例83例(うち10例はDCIS病変を含む)を用いた。20%緩衝ホルマリン液(マスクドホルム2A;日本ターナー)を使用し、迅速時に提出された材料で固定時間が数時間~1晩のもの(以下凍結後パラフィン標本)と、1日~2日固定したもの(以下パラフィン標本)の両者を用いた。これらを必要に応じてアセトンにて脱脂した後、型のごとくパラフィン包埋を行った。薄切および染色については、Hercep Test(DAKO )で定められた手順に従い、約4?mにて薄切し、シランコーティングスライドに貼り付け、45℃の伸展器にて一晩乾燥。キシレンにて脱パラフィン後、抗原賦活化処理を95℃(電気ポット)、45分間行った。1)予備実験:c-erbB2強陽性症例を用いて、毛細管現象を利用する方法(以下シーケンザ法)と載せガラス法で染色性の比較を行った。2)本実験:載せガラス法にて、凍結後パラフィン標本61例およびパラフィン標本80例に対して実施した。3)判定:メーカーにより呈示された判定表に従い複数名がそれぞれ初回判定と、同時に同一標本を見ながら判定について討論した後、再度見直し判定を行った。
【結果】1)シーケンザ法と載せガラス法との比較ではシーケンザ法において中心部の染色性の低下を認めた。2)凍結後パラフィン標本とパラフィン標本の両者が得られた57症例のうち凍結後パラフィン標本で判定が高かったものは6例(10.5%)であった。一回目の判定の結果、凍結後パラフィン標本(61例)ならびにパラフィン標本(80例)でそれぞれ一致したもの19例(31.1%)、27例(33.7%)、1段階差のもの29例(47.5%)、40例(50%)、2段階差のもの13例(21.3%)、13例(16.3%)でこのうち陽性陰性に関わるものは12例(19.7%)、7例(8.8%)であった。見直し判定において1段階差のもの6例(9.8%)、16例(20%)で、陽性陰性に関わるものは0例(0%)、2例(2.5%)であった。Hercep Test陽性(3+)症例は83例中11例(13.3%)であった。
【考察】染色方法たとえば用手法(のせガラス法、毛細管現象を利用する方法)や、自動染色機器などの方法についての指定はないが、毛細管現象を用いた方法で染色した場合、抗原過剰の場合中心部では染色性の低下が認められたことは注意が必要と思われた。判定については、Hercep Testは浸潤性乳癌を対象としたテストであるため判定においてもその浸潤部について判定を行わなくてはならない。DCISの部分が混在する場合、その部が強く染色されるために一段階強く判定する傾向がみられた。判定にはHE染色標本とあわせて観察するなど、組織学的に十分な理解が必要と考えられた。また多くの人が判定する場合、判定者の統一化が図れるようマニュアル作成が必要と思われた。組織の固定時間についての厳密な取り決めはないが、今回行った実験で固定時間の短いものが若干強い染色性を示した。固定時間の影響についても今後さらなる検討が必要と考えた。


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