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治療方針を決定づける腎細胞癌の検体取り扱い

大江 知里

兵庫医科大学 病理学・病理診断部門


 近年、腎細胞癌の治療体系は大きく変化した。従来、術後薬物療法は再発後に限られていたが、現在は再発リスクの高い症例に対し、術後補助免疫療法が施行可能となった。これに伴い、病理診断における「適切な悪性度評価」と「正確な進行度(pT stage)診断」は、術後の治療方針を決定づける極めて重要な役割を担っている。本講演では、適切な治療選択に繋げるために不可欠な病理検体の取扱いについて、病理医の視点から臨床検査技師へ向けて概説する。
 最も頻度の高い淡明細胞型腎細胞癌において、肉眼的な割面の色調(黄金色、黄色~褐色調、灰色~白色)を詳細に観察することは、悪性度や治療選択に繋がる腫瘍微小環境を読み解く鍵となる。特に灰色から白色を呈する領域は、高悪性度成分や壊死、肉腫様変化を反映していることが多いため、これらの領域を確実に標本化することが、正確なリスク分類を行うための精度向上に直結する。
 進行度診断においては、pT3a(腎実質外進展)の評価が重要である。腎癌取扱い規約第5版では、区域静脈を含む腎洞領域への進展評価がより詳細に定義された。腎洞領域は解剖学的に複雑であり、腫瘍の首座に着目して腎実質外進展の有無を判定するための適切なサンプリングを行う必要がある。臨床的にT1と診断されても、病理標本上でT3aへアップステージされる症例は予後不良であるとの報告もあり、肉眼評価と組織診断の整合性が不可欠である。
 検体の固定法も精度管理の要である。特に部分切除標本では、固定前の入割による組織膨隆が腎洞進展や断端の評価を困難にする。そのため、規約でも推奨されている注射器を用いた「ホルマリン注入固定」が有用であり、本講演ではその実際を提示する。
 病理検体の取り扱いや肉眼評価、切り出しといった一連の工程が、どのように治療選択の最適化に寄与するかを具体的に示し、臨床検査技師が適切な検体の取り扱いを通じて臨床に貢献するためのポイントを共有したい。


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