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ホルマリン固定における遺伝子検査の実際

畑中佳奈子

北海道大学病院 先端診断技術開発センター


 本邦において保険診療下のがんゲノム医療が開始し、3年余が経過しようとしている。病理部門は日常病理診断の質の維持に加え、複雑化するコンパニオン診断の対応、そしてがんゲノムプロファイリング(CGP)検査をはじめとする様々な遺伝子パネル検査に提出する病理検体の質保証や標本選定など、その果たすべき役割は益々大きくなっている。こうした状況に鑑み、日本病理学会では「2018年にゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」を策定、2019年には分子病理専門医認定制度を立ち上げた。分子病理専門医は病理技師ととともに病理検体を用いた遺伝子パネル検査における検体品質の精度管理を行い、臨床医と連携した検体の品質・量を確保、腫瘍細胞含有割合を満たす検体の選定など、チーム医療におけるその役割を担っている。さらに、遺伝子パネル検査の結果返却後、病理部門では、病理の視点から結果を確認し、適正な結果が得られていないと考えられる場合にはその原因を追究することも重要である。
 当院では、2019年8月よりがんゲノム医療中核拠点病院としてCGP検査を開始し、2021年11月までに1168症例(当院543症例)のエキスパートパネルを行っている。同時に、病理検体の品質に関する臨床研究も立ち上げ、CGP検査に提出したFFPE検体のDNA品質確認を行い、これらの実績をもとに、FFPE検体作製後3年を超える検体や、固定時間が長い検体においては、必要に応じ、CGP検査に検体を提出する前にその品質を確認している。
 また、日本病理精度保証機構においても遺伝子パネル検査にかかる外部精度評価として、2021年度にはFFPE検体のDNA品質確認のサーベイ、また、2回の調査研究を経て、腫瘍細胞含有割合に関するオプションサーベイの実施をすでに開始している。
 本講演では上記の結果を示すが、本講演が今後の日常診療の一助となれば幸いである。


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