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PAS反応の安定化のための提案

田口勝二

新百合ケ丘総合病院 臨床検査科病理検査室


【はじめに】 PAS反応は病理検査に欠くことのできない特殊染色の一つである。PAS反応に用いるシッフ試薬は、ボイルドシッフ、コールドシッフともに塩基性フクシン(パラローズアニリン)、塩酸、亜硫酸水素ナトリウム、蒸留水で調整されている。シッフ試薬の亜硫酸ガスが抜けると染色性が低下することは知られている。そこで、亜硫酸水素ナトリウムを再添加することで染色性が回復することを確認した。また、シッフ試薬は通常冷暗所に保存されるが迅速PAS反応を行う際、シッフ試薬の温度が低すぎるため良好な染色結果が得られないことがある。さらにPAS反応は様々なものに陽性を示すが細胞診の場合、陽性物質が重なり合い染色が濃すぎて判定に苦慮することもある。そこで、今回は、冷暗所保存のシッフ試薬と室温保存のシッフ試薬での迅速PAS 反応およびシッフ試薬を段階的に希釈して染色性を検討した。
【結果】劣化したシッフ試薬に、0.1%の割合で亜硫酸水素ナトリウムを添加することで直ちに染色性は回復した。迅速PAS 反応に用いるシッフ試薬は室温に保存し使用直前に亜硫酸水素ナトリウムを0.1%の割合で添加することにより5分程度で安定した染色結果が得られた。希釈シッフ試薬はいずれも32倍までは良好な染色性が得られた。さらに、カンジダは組織、細胞診標本ともに128倍でも明瞭に染めだされていた。
【提案】シッフ試薬は冷暗所に保存するのが一般的である。冷暗所に保存されたシッフ試薬は室温にもどした場合、結露が発生したり反応温度が一定でない場合が多く安定した染色結果が得られないことがある。そこで、シッフ試薬は室温で保存したものも用意しておき、使用の際0.1%の割合で亜硫酸水素ナトリウムを添加ことで直ちに安定した染色性が得られることを確認したので提案したい。


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