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コロナ禍における薄切 ~当院での取り組み~

飯野瑞貴

順天堂大学医学部附属練馬病院 病理診断科


 【はじめに】薄切工程において、ミクロトームの替刃がパラフィンブロックを切削する際、その摩擦により静電気が発生し、ミクロトーム刀に切片の貼り付きを引き起こす。その静電気を中和除去するため、息かけや加湿器によりパラフィンブロック表面に加湿を行っている。
 2020年1月、日本国内で新型コロナウイルスの感染が報告され始め、飛沫感染による伝播が示唆された。当院では息かけにより薄切を行っていたが、感染予防のために作業方法を見直し、加湿器の導入を決めた。
 【方法】薄切専用の加湿器は医療機器として販売されているが、高価であり、導入までに時間を要するため、市販の超音波式加湿器を薄切専用に改良した。加湿器の吹き出し口から出るミストがパラフィンブロックへとピンポイントに当てることができるよう、灯油ポンプを用いてホースを作製した。
 【結果】薄切用に改良した加湿器はタンク内の水量に関わらず一定量のミストが出るため、大量の連続切片作製に適していた。また、家庭用の製品であるため機器本体が軽量で、構造も単純であることから、組み立てや手入れを含め取扱いが容易であった。しかし、ホースの内部で発生した水滴が垂れることにより、ミクロトーム刀に錆が発生した。水滴がミクロトームにかからないよう 加湿器の設置場所を工夫し、ミクロトーム刀を念入りに手入れする必要があった。
加湿器の使用は、息かけによる唾液の混入を避けることができるため、遺伝子検査を対象とした切片の作製に役立つことが期待された。しかし、一般的な加湿器は水道水の使用が推奨されているため、細菌の混入防止には至らないという課題があった。
 【まとめ】新型コロナウイルス感染症の蔓延により、感染対策の観点から薄切の作業方法を見直し、市販品を改良した薄切専用の加湿器を導入した。今回はその使用経験や課題など、コロナ禍の薄切における当院での取り組みを報告する。


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