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ESD検体 当院での取り組み ~シートによるサンドイッチ・包埋時倒立法~

濱川真治,倉品賢治,近藤洋一,小坂美絵,若林 良,佐藤棟勲,吉川 葵,
大河原宏征,佐藤美佳子,羽田牧子,柏崎好美,櫻井 勉
公立昭和病院臨床検査科

田頭 周,吉本多一郎
公立昭和病院病理診断科


はじめに
ESD(endoscopic submucosal dissection)は,わが国では普遍的な治療法として広く定着し,胃は 2006年,食道は2008年,大腸も2012年に保険収載され,今では一般病院でも広く施行されるようになった.従来,当院においては臨床医による切除後,内視鏡室にてゴム板に伸展, 病理医による切り出し,臨床検査技師による包埋・薄切,染色を行ってきたが,固定から薄切の標本作製過程において,特に切り出しから包埋時のトラブルが少なからず認められてきた.その要因として,病理技師がESD検体の取り扱いに不慣れであったこと,アルコール脱水・パラフィン浸透工程の組織片のよじれによる包埋不備が挙げられる.そこで今回われわれは,病理技師による切り出し業務への参画と,シートによるサンドイッチ・包埋時倒立法を構築したので報告する.
方法
①臨床医や病理医と情報を共有し,内視鏡所見の臨床情報から,写真撮影,口側・肛門側,腫瘍範囲,断端などの肉眼所見を病理システムに記録,切り出し方向の決定し,組織片の大きさを考慮して包埋カセットの選択を行う.
②カセット内には,シート(フォームバイオプシー・シート,サクラファインテックジャパン株式会社取扱)を敷き,切り出しの準備を行う.
③切り出し後の標本は,切り出し状態の構築を保ったまま,替え刃メスの腹を使い包埋カセットへ平行移動し,シートで覆い挟み込む(シートによるサンドイッチ法).
④シートに挟まれた組織標本を取り出し,包埋時に順番にピンセットにて一定方向に倒立させ,薄切面を包埋皿に密着させる(包埋時倒立法).
結果・まとめ
切り出された組織片はシートの上に組織構築を保った状態で保持されるため,包埋時の組織片の取扱が容易となり,安定した包埋処理による良質な標本作製が可能となった. ESD検体のシートによるサンドイッチ・包埋時倒立法の構築は,病理技師の切り出し・包埋技術の向上とともに病理医の業務軽減に繋がるものと考える.


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