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コロナ禍の細胞診検体の取り扱いと感染後の細胞像について

我妻 美由紀

独立行政法人国立病院機構 東京病院


 COVID-19感染が世界中に広がり、日本では2020年1月に感染者が確認されて以降、ウイルスの変異に翻弄され、いつ終息を迎えるのか未だ分からない状況が続いている。2020年当時、当院での細胞診検体取り扱い方法を決定するにあたり疑問に思った点と処理手順について、また細胞像について少しご紹介したい。
 米国病理医協会(CAP)の提言ではどの様な検体を取り扱う場合にも、クラス II の生物学的安全キャビネットで手袋、サージカルマスク、防水ガウン、ゴーグル またはフェイスシールド使用となっている。またCOVID-19 が疑われる、または陽性である検体に接する場合はN95 マスク着用を推奨している。
 当院ではクラスⅡの安全キャビネットを使用しているが、室内排気型である。HEPAフィルターのJIS規格では「定格風量で粒径が0.3㎛の粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもつ」となっており0.1㎛のコロナウイルスが捕集されるのかが疑問であった。またウイルスの生存期間と、不活化させるにはどうすればよいのかも疑問であった。それらの疑問を解決した結果、今まで当院が行ってきた抗酸菌対策の処理法に加え、検体到着後と処理後に80%アルコールティッシュでの検体表面の清拭を追加することでコロナウイルスに対応した細胞診の検体処理として行っている。その後、無症状感染者も多くなったため、PCR検査を行っていない外来患者の検体では、コロナ感染検体に準じた対応を行っている。
 COVID‐19感染後の細胞像は剖検肺捺印では、びまん性肺障害の像であり特別な細胞は認められなかった。しかし喀痰などで肥大したⅡ型肺胞上皮が出る可能性はある。また当院ではCOVID‐19感染後の真菌感染症を経験したので、それらの細胞像をお示ししたい。
 細胞診ではCOVID‐19関連肺アスペルギルス症などのAfterコロナの疾患について、診断に寄与できるものがあることを知っていただき、今後はコロナ感染後に現れる疾患についても注視していくべきと考える。


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