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新型コロナウイルス感染症における日本病理学会の指針策定と取り組み

佐々木 毅

日本病理学会 常任理事・医療業務委員長


 新型コロナウイルス感染症(以下コロナ感染症)は2019年12月に武漢で初感染が報告された後、瞬く間に全世界でパンデミックとなり、感染死者が100万人を超えるのに半年とかからなかった。国によっては医療従事者が次々に感染し医療がひっ迫したことから、まずは医療者を感染から守るための感染予防策が提唱された。病理部門もしかりであり、特に病理部門は多診療科と連携していることから、医療を守るための病理検査技師あるいは病理医の感染予防策は非常に重要であった。
 死者が増加する中で死因の病態解明が求められ、病理解剖には大きな期待が寄せられた。コロナ感染症は飛沫感染とされていたが、従来の標準感染予防策のみで病理解剖が可能かどうかの検討に始まり、国立感染症研究所やCAPの指導を仰ぎ、「感染による死亡」、「感染が否定できない死亡」「死亡直前のPCR検査陰性」など、ケース別に分けて指針を病理学会のホームページに掲載し、日本臨床衛生検査技師会にも呼び掛け周知をお願いした。同時に喀痰などの「ハイリスク検体」の取り扱い、細胞診検体の取扱い、術中迅速時の留意事項も取りまとめ病理学会のホームページ上にアップロードした。しかし感染爆発の段階でPCR検査がひっ迫し、感染の有無について不明な検体も多く、加えてN95マスクの供給や感染防護服の配給がひっ迫する中、感染患者と対する第一線の医療者への配布が最優先され、病理部門には資材が回ってこないという時期もあった。一方で、臨床医や病院事務部門からは、「呼吸をしていないご遺体からの飛沫感染はない」や「病理部門にN95マスクまでなぜ必要か」など多数の問い合わせや一部クレームも非常に多くいただいた。
 本日は病理学会の取り組みと方針及び内部、外部組織等への対応について経時的な変遷も含めて解説する。


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