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病理学会と日臨技協同で確実にタスクシフト・タスクシェアリングを進めるために

佐々木毅

東京大学大学院医学系研究科
次世代病理情報連携学講座


「タスクシフト・タスクシェアリング」に関しては、2018年厚生労働省に立ち上げられた「医師の働き方改革に関する検討会」で本格的な議論が開始された。この検討会では多職種と比較にならない医師の長時間労働による医師本人の健康確保の困難、仕事と家庭生活の両立の困難など、様々な現状の問題点や課題が整理された。解決策として挙げられたのが医師の仕事の一部を他職種に移行する「タスクシェア・タスクシェアリング」であり、また一方で労基法遵守を目的とした医師の残業時間の上限設定を医療機関ごとに定める施設基準(年間960時間あるいは1860時間まで)の技術設定と施設認定である。
タスクシェア・タスクシェアリングという考え方は、日本発祥ではなく、もとはWHOが医療人材不足を部分的に解決する手段として提唱したものであり、具体的にはアフリカにおけるHIV/AIDSの流行時に、医師の業務(医行為)の一部を看護師等に移行したことに端を発する。その後、世界医師会決議(2009年)などを経て日本でも本格的に議論されるに至っている。
今回のタスクシフト・タスクシェアリングでは、各団体、アカデミア等から移行可能あるいは受託可能な技術の提案が行われ、それらをもとに厚労省が「現行制度の下で実施可能な技術」を2020年12月に取りまとめ公示されている。病理業務に関しては、「所見の下書きの作成」「細胞診所見を担当医に交付」「手術検体等に対する切り出し」「デジタル病理画像の取り込み・データ管理・装置調整」「病理診断書ダブルチェック」「病理解剖」などの技術が挙げられているが、これらは必ずしも病理学会が提案した技術と一致していない。
「Pathology Assistant(PA)制度」でもめ、実際にはタスクシフトに失敗した苦い過去があるが、今回は同じ轍を踏まぬよう、日臨技と病理学会とでワーキンググループ(WG)が立ち上げられている。今後両団体で十分に議論し、コンセンサスを得ながら確実にタスクシフトを進めると同時に、タスクシフトを受けた側の病理検査技師に過剰な業務負担が発生しないよう国に対する政策提言等も協同で行っていく予定である。


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