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がんのリキッドバイオプシー検査用検体の品質管理について

山口敏和

株式会社ビー・エム・エル


 がんのリキッドバイオプシー検査とは、血液や尿など、身体への負担なく採取できる液性検体を用いてがんを診断する技術である。通常のバイオプシーでは内視鏡や針でがん組織の一部を採取するが、苦痛を伴うだけでなく、腫瘍組織の一部しか採取できないために偏った検査情報しか得られないリスクがあった。近年では、血液中に存在するcfDNA(cell-free DNA)の中に含まれる、腫瘍から漏れ出た僅かなctDNA(circulating tumor DNA)をターゲットにして、がんの遺伝子変異スクリーニング、治療後の効果判定、および再発の早期診断などが行われ、経時的な全身の腫瘍プロファイルの変化を捉えられる優れたがんの遺伝子解析技術として普及しつつある。通常、採血にはEDTA管を用い、分離血漿からcfDNAを抽出する。このとき、buffy coatの白血球を混入させると血球のDNAが加わり、ctDNAの遺伝子変異の検出感度低下の原因となる。一方、血清では凝固完了までの室温放置でcfDNAの分解が懸念され、また、凝固後の遠心分離で白血球が壊れ、血球由来DNAの増加に繋がる。従ってEDTA管を使用する場合には、採血後の速やかな血漿分離と純粋な血漿層の分取、さらに速やかな凍結保存がポイントとなる。最近では、前処理が不要なSereck TubeやCell-Free DNA Collection Tubeなど、保存液入りの採血管が使用されることも多い。抽出したcfDNAの収量や純度は、TapeStationなどの電気泳動システムで得られるエレクトロフェログラムで評価できる。本発表では、採血からcfDNA分離精製までの過程での検体ハンドリングがcfDNAの品質に与える影響度、また、その品質管理基準について報告する。


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